「ナマハゲvsパーントゥ センター街での決闘」

 渋谷にはあまり行かない。大昔、港区に住んでいたときは、近場の繁華街ということで買い物などで足を運んだものだが(当時は大きなCD屋さんも本屋さんもたくさんあったっけ)、近年はユーロスペースなどで映画を見るとき、ごくまれにBunkamura、そのあと時間があればタワーレコードに立ち寄るという程度。

 先週月曜、鈴木優人さんの取材があり、久々に渋谷に。表参道を自転車でがーっと下り、明治通りに入っても、歩道には人があふれている感じがする。平日なのになんだろうね、と思っていたら、ちょうどハロウィーンの期間だという。

 ああ、軽トラをひっくり返すお祭りだよね。要するに、キリスト教の布教によって淘汰されたはずのアニミズムがヨーロッパの辺境に密かに残っていて、それが移民によってアメリカ大陸へもたらされ、土着文化が脆弱だった合衆国で市民権を得たのち、商業的理由で太平洋を渡り、アニミズムの国でその華を咲かせているという。荒っぽい「お盆」みたいなもんだ。

 この日は、そのアニミズムを淘汰してきたキリスト教にまつわる音楽について鈴木優人さんにお話を伺い、暮れかかった街角に出てみたら、アニミズムの空気もだんだんと濃くなっている。タワーレコード前にも警察の装甲バスがずらりと並び、駅に近づくたびに報道陣の数も目に付いてくる。

 その日は駅前の交差点に近づくこともなく、さっさと帰宅してしまったのだが、メディアを通して見聞きすると、最近の渋谷ハロウィーンには、北関東的な荒々しさを伴った、憂さ晴らし的な方向性が出てきているという。祭りの方向としては、決して間違っていないのだが、軽トラひっくり返すのは、ちとカッコ悪いわな。

 せめてひっくり返すなら、パトカーとか装甲バスぐらいじゃないと。そのうち、警察だって、ひっくり返される用のパトカーをちゃんと用意して交差点の近くに設置してくれるかもしれない。
 ただのクルマじゃ物足りねえ。大型バスやミキサー車をひっくり返したいといったチャレンジャーも出始めて、彼らは夏頃から集まって「連」を作り、体力作りに精を出し、チームワークを磨くようにもなる。
 その頃になると、ハチ公前広場に有料観覧席なんか作られちゃって、来賓の渋谷区長とか渋谷署の署長が肩を並べ、「いやあ、今年のひっくり返しの決まり手は見事でしたなあ」などと言葉を交わす。すっかり、日本の正しいお祭り化が進んできたって感じ。
 そんな光景を目にしたお年寄りが、インタビューに答えて「わしらの若い頃のハロウィーンはこんなんじゃなかった。もっと好き勝手な雰囲気が良かったのに、こんなんでいいのか」なんて愚痴ってたりしてさ。
 
 まあ、アニミズムの方向性を拡張しようというなら、やはり秋田のナマハゲとか、宮古島のパーントゥあたりをハロウィーンに重ねるのが、ずっと正統派といえる。
 包丁かざしたナマハゲや、通行人に泥を塗りまくるパーントゥの集団が、渋谷の交差点でぶつかり合うなんて、かなりパニック。非日常性がどぱーんと出てたまらないと思うのだが。「ナマハゲvsパーントゥ センター街での決闘」なんて実録映画を撮影する奴も出てきてさ。

 そういえば、渋谷には松濤美術館もあった。来月から始まる「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」という展覧会は面白そう。「渋谷と廃墟」という特別講座も気になる。