あの川崎に勝ってしまう

 先週24日、ちょうど上野で都響を聴いていた時分、天皇杯の準準決勝が競われていて、我がモンテディオ山形もホームで川崎フロンターレと対戦するという好カード!というより、どうやって勝つのかちょっと想像できぬレベルの試合というわけなのだけれど、しっかと情報断ちしたまま、演奏会後もゆるゆると飲み食いなどし、夜も更けた頃に帰宅して録画してあった試合を恐る恐る見た。

 終始、押されっぱなし、というのは予想の範囲だ。だって、相手はJ1リーグで首位を走る、絶好調の川崎なのですもの。あのイニエスタ様だって賛辞を送るほどのスムースな攻撃力を見せつける相手には、もうドン引き路線しか方法はないというか。
 
 それでも、セットプレイから2点先取で前半折り返し。こういうラッキーはときおりあるのだが、本番はここから、怒濤の攻撃をどうやって防ぐのかに手に汗握る展開になる。
 そんなおり、49分に、カウンターから相手の背後スペースを突いて3点目を取ってしまう。ホントに勝ってしまうんじゃないの、という高揚と、これからとんでもないしっぺ返しが行われるのではないかという恐怖。

 というのも、今年の山形のクロージングの下手さは、ハンパではないのである。
 リーグでの同点の多さが示している通り、リードしてから1点差をなかなか守れないのよね。終了直前に失点して、勝ち点をあっさり献上、というシーンを何度見たことか。3点差もついたし、「この試合もらった」とふんぞり返って新しいワインを開栓する、なんて余裕はこの川崎相手ではなかなか生まれない。缶酎ハイのプルをひっそり開ける。

 川崎が2点を返す。相手キーパーがレッドカード退場で山形が1人多い状態にもなったけど、ほとんどアドバンテージが感じられない運び。
 残り20分で1点を守れるかという瀬戸際に入った。ここで失点しちゃえば「今年の山形のよくあるパターンのなかで、もっとも際どかったやつ」として記憶されることになるが、守り切れればクラブの一つの財産になることは間違いない。

 アディショナル・タイムは、なんと8分。退場やケガがあったとしても珍しい、「我ら審判は上位チームに忖度してます。てゆうか、そっちのほうがゲームとしても面白いでしょ?」といった意図がこめられたタイムなのだが、これをなんとか無失点で切り抜け、3−2で勝ってしまった山形。キェーーッと自然に声が出たわ。

 まあ、今季のJ2リーグにおける山形は、上位の相手にはわりかし強いけど、そうでない相手にはなんだか弱い、という弱者救済、昭和の正義の味方的立場を築いており、その傾向が明確に示された一戦ということもできるかもしれぬ。
 戦術としては、相手にポゼッションをとらせ、守りを重視して相手の隙を捜す。ボールを奪うと、速攻でカウンター、というのではなく、ゆっくりと丁寧につないで相手陣内に持ち込むという効率の悪さで勝ったり負けたり、多くは引き分けたりしたわけだけど、じつはそんなコストの悪いところに愛着を持ち始めている自分もいたりしてさ。